福岡泡盛会 泡盛愛飲のすそ野広げる会21年続く

2005年07月20日

 【福岡】一度杯を交わせば、「ミナ・チョーデー(皆・兄弟)」--。心地よい喧騒のなかで、ただひたすら泡盛を楽しみ、和が紡がれていく濃密な時間。泡盛が人と人をつなぐ酒会が21年もの歳月、福岡の地で続いている。
 昭和59年9月から、8月を除く毎月1回のペースで開かれる、飲み手が母体で主体の酒会「福岡泡盛会」。重ねた会は230回を超える。同会会長は、「ラジオ沖縄」福岡支局長の山城高常さん。沖縄の泡盛メーカーから、「何とか底辺を広げることはできないか」と相談を持ち掛けられたのが、会発足の発端だ。
 当時は泡盛を知る人は少なく、ましてや愛飲の人はまれだった。「(泡盛に触れ楽しむ)波紋を外へと広げていく」(山城さん)目的で立ち上げた会で、現に泡盛愛飲のすそ野を広げてきた。会には毎回160人程度の参加があるが、うち2、30人は初参加。年間では250人程度が新たに泡盛と出会い魅力に触れる機会となる。一度参加すると、半年間返信がない場合を除き、会の案内状を送る。その送付先名簿の登録者数は700人に達しているが、沖縄県人は5%にも満たないという。
 「会は多くの人と知り合う機会」(山城さん)でもある。会は決まって1時間。「スマートに酒を楽しむため」だという。
 7月8日、福岡天神の平和楼で開かれた会には約190人が参加。福岡市在住の大原盡さんは“皆勤者”の一人。友人との語らいを楽しみながら、実に旨そうに杯を重ねる。“長老”と敬愛される版画家の木村晃郎さん(88)は常に愛用の杯持参で参加。「普通のグラスだと酒がかわいそうだから」だという。博多中洲でスナックを経営する田中妙子さんは父親が沖縄県出身で、24年前から店で泡盛を出している。泡盛へのさまざまな思いが交差しながら談笑の輪が広がる。
 「メーカーは酒をご提供するだけで、何もしない。時々参加させていただいて、皆さんの様子をじっと見ています」と語るのは、「久米島の久米仙」(沖縄県島尻郡久米島町)の島袋周仁社長。眼前には飲み手の生の姿があって、蔵元が得るものは貴重で大きい。